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Veronicastrum sibiricum (L.) Pennell subsp. yezoense (H.Hara) T.Yamaz.
一目でそれとわかる独特な姿のエゾクガイソウ
Canon EOS5D + EF200mm F2.8L II USM
Toma Town in Late July, 2012
5〜10枚の葉が数段輪生する姿が九蓋草という名の由来
Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Kamishihoro Town in Mid July, 2014
花序は長さ20〜40cmほどで下部の花から咲き上がります
Canon EOS5D + EF200mm F2.8L II USM
Toma Town in Late July, 2012
花冠は筒状で先が4裂し2本の雄しべと花柱が飛び出しています
Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Naganuma Town in Late July, 2016
果実は円柱形&花軸には短毛が密生しています
Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Naganuma Town in Late July, 2016
【 参考文献 】
畔上能力・菱山忠三郎・西田尚道 (2013)『増補改訂新版 山に咲く花』門田裕一監修, p.459, 山と渓谷社.
Hinoma, A. 2001. FLORA OF HOKKAIDO - Distribution Maps of Vascular Plants in HOKKAIDO, JAPAN. [ http://www.hinoma.com/maps/plants/m8984pa.gif ] (accessed August 4, 2016).
Ohashi, H. 2015. Variation in Veronicastrum sibiricum (Plantaginaceae). The Journal of Japanese Botany 90(3): 179-191.
高橋勝雄 (2007)『山渓名前図鑑 野草の名前 夏』p.118, 山と渓谷社.
梅沢俊 (2012)『新北海道の花』p.305, 北海道大学出版会.
山崎敬 (1990)「クガイソウとエゾクガイソウ」植物研究雑誌 65(8), pp.240-242, ツムラ.
盛夏の頃、林縁や草地などの明るい環境で見られ、生い茂る周囲の植物に負けじと美しい薄藤色の個性的な花序を突き出しているエゾクガイソウ Veronicastrum sibiricum subsp. yezoense は、郊外を車で走っていても容易にその存在を認識できるほど。九蓋草の“蓋”は傘や笠を意味し、それらに見立てた輪生する葉が層を多数成すようにつくことから名付けられたようです。九階草と漢字表記する場合もあります。
エゾクガイソウは本州に分布するクガイソウ V. japonicum var. japonicum に比べ全体が大型で、具体的には輪生する葉は節ごとに5〜10 (4〜8・以下括弧内はクガイソウの値) 枚、花序の長さは20〜40 (10〜25) cm、花はほとんど無柄 (萼と同長か長い花柄あり) で、あっても1mm以下、花冠は長さ7〜8 (5〜6) mm、花冠裂片の先は円いかやや鈍い (普通とがる) …などの明らかな違いがあることから別種としての扱いが妥当であり、エゾクガイソウは中国東北部や朝鮮半島、シベリアなどに分布するシベリアクガイソウ V. sibiricum var. sibiricum の亜種とされてきました。
ところが2015年、これらクガイソウ類の区別は気温差に関連するクライン的変異 (単純に言えば連続変異) であり、変種以上のランクで識別するほど明瞭ではないことから、日本国内のクガイソウを1種とし、その中にいくつかの品種を認める、という論考が出されました。これを採用するならば、従来のエゾクガイソウはクガイソウ V. sibiricum f. glabrata、同じく従来のクガイソウはシベリアクガイソウ V. sibiricum f. sibiricum となります。何ともややこしいですね…述べている私も理解が追いつきません。つまり、今までのクガイソウはシベリアクガイソウに含まれ、今までのエゾクガイソウはシベリアクガイソウの1品種となり和名はクガイソウとなる…という、植物屋さん大混乱間違いなしの展開になるかも。このHPでは当面、従来のままエゾクガイソウとしておきますが、もしこの新たな見解の広がりが認識できたなら、いずれ改訂しようと考えています。