Last updated on March 15, 2017

エゾノカワラマツバ - 蝦夷河原松葉

Galium verum L. subsp. asiaticum (Nakai) T.Yamaz. var. trachycarpum DC.

エゾノカワラマツバ全体

まるで泡のように黄色い花を多数咲かせるエゾノカワラマツバ

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Apoidake in Early July, 2014

エゾノカワラマツバ全体

大きいもので高さ50cmほど&山地に産するものは20〜30cmほどでしょうか

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Hakken in Early June, 2015

エゾノカワラマツバ芽出し

春の芽出し間もない頃でも一目でそれとわかる特徴的な姿

Canon EOS5D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Ishikari City in Early May, 2015

エゾノカワラマツバ全体

葉は長さ2〜3cmほどの線形で触ると予想外に柔らかいのです

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Apoidake in Early July, 2014

エゾノカワラマツバ葉

8〜10枚ほどの葉が輪生しますが本葉は2枚で残りは托葉だとか

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Hakken in Mid August, 2013

エゾノカワラマツバ花序

花は頂端および腋生する円錐花序に多数つきます

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Hakken in Early June, 2015

エゾノカワラマツバ花

花冠は先が4裂して平開し径2〜3mmほど

Canon EOS5D + TAMRON SP AF90mm F2.8 Di MACRO
Mt. Apoidake in Late August, 2009

チョウセンカワラマツバ全体

蛇紋岩地に生育していたこれはチョウセンカワラマツバ

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Hobetsu - Mukawa Town in Mid July, 2016

チョウセンカワラマツバ花

チョウセンカワラマツバの花色は白で果実は有毛

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Hobetsu - Mukawa Town in Mid July, 2016

カワラマツバ全体

カンラン岩地に生育していたこれはカワラマツバ

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Apoidake in Early June, 2014

カワラマツバ花

カワラマツバの花色は白で果実は無毛

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Apoidake in Early June, 2014

チョウセンカワラマツバ&エゾノカワラマツバ

白花と黄花は同所的に生育することも

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Apoidake in Early June, 2014

エゾノカワラマツバ全体

花色が中間的なものもしばしば見かけます

Canon EOS5D + EF200mm F2.8L II USM
Ishikari City in Late June, 2011

エゾノカワラマツバ生育環境

海沿いの原生花園などでは大きな群落をつくります

Canon EOS5D + TAMRON SP AF90mm F2.8 Di MACRO
Lake Saroma - Saroma Town in Mid July, 2010

蝦夷河原松葉 - エゾノカワラマツバ

- アカネ科 ヤエムグラ属 -

北海道では比較的目にする機会の多い植物で、花を泡のようにたっぷり咲かせる姿が大いに人目を引きつけるエゾノカワラマツバ Galium verum subsp. asiaticum var. trachycarpum。海岸草原や山地の岩場、さらには超塩基性岩地まで適応範囲はやや広め。単純に日当りが良く、他の植物があまり進出しないような環境を好んで生育している印象です。ここではエゾノカワラマツバを表題種にしていますが、北海道に産する広義カワラマツバの一群をまとめて載せています。大雑把に言うと果実が有毛か無毛か、花が黄色か白色かという組み合わせで分ける見解が一般的ではないかと。

エゾノカワラマツバを始めとするこれらの種を語るには、ややこしい分類の話から始めなければなりません。まず広義では Galium verum という種に含まれ、これはヨーロッパ、北アフリカ、アジアなど広い地域に分布しています。さらにおよそその地域ごとに亜種として分けられ、日本では G. verum subsp. asiaticum が基準亜種となり、果実の毛の有無で2変種に分かれます。有毛なものは var. trachycarpum で、これにはエゾノカワラマツバという和名があてられ、花冠は黄色。さらにその品種として、白っぽい花冠のチョウセンカワラマツバ f. album があります。一方、果実が無毛なものは var. asiaticum で、これには2つの品種があり、花冠が黄色のキバナカワラマツバ f. luteolum と白っぽい花冠のカワラマツバ f. lacteum があります…わかりづらいねー。

表にまとめるとこんな感じ
基準亜種 変種 品種 和名 果実の毛 花冠の色
Galium verum ssp. asiaticum var. trachycarpum ⎯⎯⎯ エゾノカワラマツバ 有毛 黄色
f. album チョウセンカワラマツバ 白色
var. asiaticum f. luteolum キバナカワラマツバ 無毛 黄色
f. lacteum カワラマツバ 白色
 

上記1変種3品種の他、エゾノカワラマツバの品種として全体に毛深いエゾノケカワラマツバ f. tomentosum と、北海道には分布しませんが花冠に著しい宿存性の毛があるという品種シナノカワラマツバ f. shinanense なども記載されているようです。なお、これらの特に花色では中間的なものも多く見られるという、よくあるパターン。こんな品種もあるんだね…程度のゆるい感覚で見守るのがよろしいのではないでしょうか。

私見ですが、北海道において見かける機会が最も多いのは果実が有毛で黄花のエゾノカワラマツバ、次いで多いのは同じく果実有毛で白花のチョウセンカワラマツバではないかと。一方、果実無毛のキバナカワラマツバとカワラマツバは、かなり少数派という印象を持っています。

【 参考文献 】

畔上能力・菱山忠三郎・西田尚道 (2013)『増補改訂新版 野に咲く花』林弥栄・門田裕一監修, p.422, 山と渓谷社.

Chen, T. and F. Ehrendorfer. 2011. Flora of China 19: 139-141, [ http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=200022090 ] (accessed March 12, 2017).

Hinoma, A. 2006. FLORA OF HOKKAIDO - Distribution Maps of Vascular Plants in HOKKAIDO, JAPAN. [ http://www.hinoma.com/maps/plants/m9125pa.gif ] (accessed March 12, 2017).

檜山庫三 (1955)「カワラマツバの一品 シナノカワラマツバ」植物研究雑誌 20(4), p.101, ツムラ.

松下和江・高田令子 (2011)『北海道のアカネハンドブック』pp.40-41, ニムオロ自然研究会.

Nakai, T. 1939. Natural Varieties of Galium boreale and Galium verum found in East Asia. The Journal of Japanese Botany 15(6): 339-353.

Ohwi, J. 1965. FLORA OF JAPAN in English: 831.

清水建美編著 (2014)『増補改訂新版 高山に咲く花』門田裕一監修, pp.296-297, 山と渓谷社.

梅沢俊 (2009)『新版北海道の高山植物』p.54, 北海道新聞社.

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