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エゾノサワアザミ - 蝦夷沢薊

Cirsium pectinellum A.Gray

エゾノサワアザミ全体

林縁や湿地で多く見かけるエゾノサワアザミ

Canon EOS5D + TAMRON SP AF90mm F2.8 Di MACRO
Sarobetsu Mire - Toyotomi Town in Early July, 2012

エゾノサワアザミ展葉

芽出しの頃から特徴のある葉を出しています

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Tsukigata Town in Mid May, 2015

エゾノサワアザミ茎葉

葉は櫛のように深裂あるいは全裂しています

Canon EOS5D + TAMRON SP AF90mm F2.8 Di MACRO
Sarobetsu Mire - Toyotomi Town in Early July, 2012

エゾノサワアザミ花

茎の上部や総苞には蜘蛛毛が目立ちます

Canon EOS5D + TAMRON SP AF90mm F2.8 Di MACRO
Sarobetsu Mire - Toyotomi Town in Early July, 2012

エゾノサワアザミ全体

全体像の変異が大きい種です…もしかしたらこのタイプが典型か?

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Tomakomai City in Mid July, 2014

エゾノサワアザミ茎葉

櫛のように見事な裂け方…裂片の幅は1cmほど

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Tomakomai City in Mid July, 2014

エゾノサワアザミ根出葉

この個体は花期に根出葉が枯れていました

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Tomakomai City in Mid July, 2014

エゾノサワアザミ花

総苞片は6列か?腺体はないと思われます

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Tomakomai City in Mid July, 2014

エゾノサワアザミ&コキマダラセセリ

コキマダラセセリが訪花していました

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Tomakomai City in Mid July, 2014

蝦夷沢薊 - エゾノサワアザミ

- キク科 アザミ属 -

日本国内では北海道のみ分布し主に湿原や林縁で見られ、櫛のように裂ける葉が個性的です。
このエゾノサワアザミのタイプ標本は、アメリカのハーバード大学グレイ標本館に所蔵され、
米国北太平洋艦隊(ペリー艦隊)が苫小牧市で採集したと考えられています…歴史を感じますね。
エゾノサワアザミは最近分類が見直されている最中で、その要点を下記にまとめてみました。

 エゾノサワアザミと言えば「低地〜山地の湿原や湿った所/高さ50〜1m/茎は細く有毛で上部に蜘蛛毛がある/根出葉は花時に残ることが多い/葉身は櫛歯状に深〜全裂し裂片の幅は1cmほど/頭花は横〜下向き/総苞片は線形で7列、外片はやや扁平で基部は卵形(梅沢 2009)」というのが今までの認識でした。このページで言うと、主に豊富町で撮った1〜4枚目の写真の個体がこれに該当すると思われます。

 ところが近年は北海道のアザミ属が見直されていて、エゾノサワアザミも例外に漏れずその認識が変わりつつあります。「低地の湿地/高さ50〜1m/茎は細く無毛で刺もない/根出葉は花時に枯れる/茎葉は櫛歯状に羽状全裂し中肋が顕著/羽片は幅5mm以下/頭花は下向き/総苞片は線形で6列で斜上〜開出する/道央以南に分布(梅沢 2012)」とのこと。このページで言うと、苫小牧市の某湿原で撮った5〜9枚目の写真の個体がこれに該当するものではないかと。

 では、今までエゾノサワアザミと認識していたものは何だったのか。ここでエゾキレハアザミ(仮称)というものが登場します。「山地の林縁や湿地/高さ約1m/茎に白毛と刺がある/葉は羽状中裂〜深裂/後志以北、以東(梅沢 2012)」これは近年見直された新たなエゾノサワアザミから弾き出されたもの達を程よく補完する印象ですが、まだ仮称。つまり正式に発表されていないということ。「エゾキレハアザミ(仮称)は、西は倶知安町から道央を経て、道東と道北に広く分布することが分かっている…中略…林縁では全体が優しい感じで、葉も薄質で、茎には翼に沿ってトゲが多い。風衝湿原では全体が剛壮になり、葉は皮質となるが、茎のトゲは逆に少ない(門田 2012)」そして「それ(エゾキレハアザミのこと)をどのように扱うのか現在検討中なのでここではこれ以上触れないことにする(門田 2015)」とのこと。

 今までエゾノサワアザミとされていたものの中から、すでにエゾマミヤアザミ、アッケシアザミ、テシオアザミ、チカブミアザミが細分化されていて、今後は先に述べたエゾキレハアザミ(仮称)の扱いがどのようになるのか、進展を注視していきたいと思います。

【 参考文献 】

堀繁久・櫻井正俊 (2015)『北海道の蝶と蛾』p.89, 北海道新聞社.

門田裕一 (2008)「エゾヤマアザミとエゾノサワアザミ」北方山草 25, pp.45-55, 北方山草会.

門田裕一 (2012)「北海道産植物ノート(3):根室半島のアザミたち」北方山草 29, pp.69-78, 北方山草会.

門田裕一 (2013)「国立科学博物館植物研究部 日本のアザミ」[ http://www.kahaku.go.jp/research/db/botany/azami/ ] (参照2016-03-03).

門田裕一 (2015)「北海道産植物ノート(4) 北海道のアザミ、その後」北方山草 32, pp.31-36, 北方山草会.

清水建美編著 (2014)『増補改訂新版 高山に咲く花』門田裕一監修, pp.404-405, 山と渓谷社.

梅沢俊 (2001)『北海道 夏〜秋の花 絵とき検索表III』pp.26-28, エコ・ネットワーク.

梅沢俊 (2009)『新版 北海道の高山植物』p.27, 北海道新聞社.

梅沢俊 (2012)『新 北海道の花』p.211, 北海道大学出版会.

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