Last updated on May 28, 2017
Viola collina Besser
全体に毛だらけで遠目には白っぽく見えるエゾアオイスミレ
Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Monbetsudake - Date City in Early May, 2014
展葉より先に開花していることが多いですね
Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Monbetsudake - Date City in Early May, 2014
よく似たアオイスミレに比べると花柄は立ち上がる印象
Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Monbetsudake - Date City in Early May, 2014
側花弁が突き出すように咲くという傾向は確かにある…かな
Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Monbetsudake - Date City in Early May, 2014
側花弁に毛があり花柱は大きく下へ曲がっています
Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Monbetsudake - Date City in Early May, 2014
萼片は先端が丸みを帯び距は太く丸っこい感じ
Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Monbetsudake - Date City in Early May, 2014
葉は先がとがり気味の卵形でアオイスミレとは異なる印象が
Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Monbetsudake - Date City in Early May, 2014
越冬葉は基本的にありませんね
Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Monbetsudake - Date City in Early May, 2014
葉柄はどんどん伸びて果実期には20cmほどになるとか
Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Monbetsudake - Date City in Early May, 2014
托葉の縁は裂けず長毛が見られます
Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Monbetsudake - Date City in Early May, 2014
匍匐茎は出さないので密な群生は作らない傾向
Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Monbetsudake - Date City in Early May, 2014
【 参考文献 】
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細川一実 (2013)「スミレの閉鎖花(31)エゾアオイスミレ」[ http://sumiresanpo.cocolog-nifty.com/blog/2013/11/31-8d30.html ] (参照 2017-5-18).
五十嵐博 (2008)「北海道スミレ図鑑」faura 19, pp.18-23, ナチュラリー.
五十嵐博 (2010)「エゾアオイスミレの北海道分布」北方山草 27, pp.45-50, 北方山草会.
いがりまさし (2012)『増補改訂 日本のスミレ』pp.106-107, 山と渓谷社.
Ohwi, J. 1965. FLORA OF JAPAN in English: 635.
武田眞一 (2012)「岩手県におけるエゾアオイスミレとアオイスミレの垂直分布と自生地の温量指数から見た両種の分布域」岩手植物の会会報 49, pp.1-8, 岩手植物の会.
梅沢俊 (2007)『改訂版 北海道 春の花 絵とき検索表II』pp.14-15, エコ・ネットワーク.
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山田隆彦 (2010)『スミレ ハンドブック』p.48, 文一総合出版.
早春に咲くスミレの一つで、全体に白い軟毛を纏った姿は、淡い紫色の花と相まって早春にふさわしい優しげな雰囲気が大変魅力的なエゾアオイスミレ Viola collina。ユーラシア大陸に広く分布しますが、東アジアとヨーロッパ中央部が2大中心分布域と言えるようです。日本国内では北海道、本州北部から中部に分布し、近年広島県でも自生が確認されたようです。北海道では広範囲に産地が点在しており、道北では蛇紋岩地に生育していますが、なぜか他の産地ではこの限りではなく、特筆すべきことがないような土壌でも見られます。本州中部では火山灰地、ヨーロッパでは石灰岩地を好むようです。種小名 collina は、ラテン語で丘を意味する collis が由来だと考えられることから、日当たりと水はけが良い丘陵のような環境をイメージすることは強ち的外れではない…と思われますが、もっと様々な要素が複雑に絡み合い、現在の分布を作り上げてきたのでしょう。いずれにせよ、北海道内におけるエゾアオイスミレはとても興味深く不思議な分布を示しています。
同じニオイスミレ類の アオイスミレ V. hondoensis と大変良く似ており、国内分布の中心と考えられる東北地方では両種が混生することもあるようです。エゾアオイスミレは全体の毛が比較的多いこと、葉は先がややとがった卵形で花後はアオイスミレほど大きくならないこと、越冬葉が見られないこと、匍匐茎がないことなどが特徴。ただし越冬葉に関しては、アオイスミレには冬季に枯れる個体があり、さらにエゾアオイスミレでは稀に越冬葉が見られる個体もあるらしく、注意が必要です。より確実なのは明らかな匍匐茎を出さないことでしょうか。実際に自生地では、アオイスミレのようにマット状の群生を作る傾向はあまり見られず、株が点々と生育している印象です。
ところで、スミレ属を見分ける際に使用されるポイントの一つに、地上茎の有無があります。ニオイスミレ類は地上茎のあるスミレとされ、例えばアオイスミレでは匍匐茎が地上茎に該当します。ところが、このエゾアオイスミレは匍匐茎を持たないとされるので、地上茎がないスミレに分類されるのでは?やはり何事にも例外は付きものなのか?と長らく疑問に思っていましたが、その答えを提示してくれたのが細川一実さんのサイト「北海道植物関連文献目録」内にあるブログ「北海道スミレ散歩」でした。このブログ内にエゾアオイスミレの閉鎖花を紹介したページがあり、2cmほどの地上茎を出している写真と共に「アオイスミレの地上茎を短くしただけの姿をしていて、よく似た形態をしていた」との知見を述べられており、短いながらもしっかり地上茎があったのか!と得心した次第です。
「エゾアオイスミレは普通冬期に地上部が完全に枯れて冬芽の多くは地中に形成される一方で、アオイスミレの越冬芽は地上に露出しており、雪解け後の低温で花芽が枯死している個体も多い」という報告もあることから、アオイスミレに比べ大幅に短いエゾアオイスミレの地上茎は、より耐寒性に優れた姿なのかもしれません。そして、準日本特産種とも言えるアオイスミレに対し、アジアからヨーロッパまで広く分布するエゾアオイスミレという現在の世界的な分布傾向から考えると、いがりまさしさんが著書『日本のスミレ』の中で、エゾアオイスミレをアオイスミレの深山型であるという見方に対して述べられている「温暖で湿潤な日本の気候に合わせて特殊化したのはアオイスミレのほうだと思われる」との一文が的を射た見解なのでしょうね。