Last updated on July 17, 2018

ユウバリリンドウ - 夕張竜胆

Gentianella amarella (L.) Börner subsp. yuparensis (Takeda) Toyok.

ユウバリリンドウ全体

北海道の固有亜種とされるユウバリリンドウ

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Yubaridake in Last August, 2015

ユウバリリンドウ全体

葉は狭卵形で対生し先がとがっています

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Yubaridake in Last August, 2015

ユウバリリンドウ花

花冠は先が5裂し内片は細かく基部まで裂けて糸状に

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Yubaridake in Last August, 2015

ユウバリリンドウ花

花冠は4裂するものもみられます

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Yubaridake in Last August, 2015

ユウバリリンドウ花

萼は3/4以上裂けて細長い裂片がよく目立っています

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Yubaridake in Last August, 2015

ユウバリリンドウ全体

草丈はかなり様々…高いものは30cmになるとか

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Yubaridake in Last August, 2015

ユウバリリンドウ全体

まるで地面から花を咲かせているようなものも

Canon EOS7D + EF300mm F4L IS USM
Mt. Yubaridake in Early September, 2012

ユウバリリンドウ生育環境

めっきり花が減った秋の蛇紋岩地に色を添えます

Canon EOS7D + EF100mm F2.8L MACRO IS USM
Mt. Yubaridake in Last August, 2015

夕張竜胆 - ユウバリリンドウ

- リンドウ科 チシマリンドウ属 -

環境省RL(2017) 絶滅危惧IB類(EN)

北海道RDB(2001) 絶滅危急種(Vu)

花の名山と例えられる夕張岳も秋になると登山者は少なくなり、人混みが大嫌いな私にとってはゆっくり山行を楽しむ絶好の機会です。とは言え、人も花も少なくなる代わりにヒグマの気配がひしひしと感じられるというデメリットはありますが…。そんな秋の夕張岳で見頃を迎えるのが、その山名を冠したユウバリリンドウ Gentianella amarella subsp. yuparensis。蛇紋岩崩壊地で、小さいながらもハッとするような赤紫色の花を咲かせています。この優しげな美しさに一目惚れしてしまうお方もきっと多いことでしょう。

北海道の固有亜種で、夕張山地、日高山脈、大雪山系の岩礫地に生育していますが、どの産地においても分布はかなり局所的。夕張山地及び日高山脈では超塩基性岩地で見られますが、大雪山系ではその限りではないようです。いずれにしても、他の植物の生育が厳しい岩礫地で細々と生き残ってきた遺存種と言えるかもしれません。過去の文献では、いわゆる表大雪にも産するという記録がありますが、これは本当なのか?ご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報を。

かつてユウバリリンドウは、ミヤマリンドウ Gentiana nipponicaフデリンドウ Gentiana zollingeri などと同じリンドウ属 Gentiana に含まれる独立種でしたが、花冠内片が糸状に細かく裂けることからチシマリンドウ属 Gentianella に移され、現在ではヨーロッパを中心として周北極に分布する G. amarella の亜種とされました。日本国内においてチシマリンドウ属はチシマリンドウ G. auriculate、オノエリンドウ G. amarella subsp. takedae、そしてこのユウバリリンドウを含む1種2亜種が分布し、北海道ではその全てを見ることができます。

これら3種は互いによく似ており、特にユウバリリンドウとオノエリンドウは同種と思えるほどですが、ユウバリリンドウの花冠内片は基部まで深く裂けるのに対し、オノエリンドウでは内片の裂け方がやや浅く、萼もユウバリリンドウの方が深く裂ける傾向があります。チシマリンドウは萼の形状が全く異なり、葉の先端も前2種ほどとがらないようなので、比較的見分けやすいかと。そもそもこれら3種は (現時点における既知の産地で) 同所的に産することがなく、オノエリンドウは羊蹄山、チシマリンドウは利尻・礼文両島及び大平山、ユウバリリンドウは上述の通りで、まるで狙ったかのように産地が異なっています。

ユウバリリンドウの自生地を幾度か訪れて気になったのは、下部の葉を残し、茎の途中から花を含む上部がなくなっている株が少なからず見られたこと。おそらくエゾシカに食べられたものと思われます。ユウバリリンドウは多年草ではなく越年草なので、結実する前に消失してしまうことの影響は推して知るべし…ですね。

【 参考文献 】

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Toyokuni, H. 1963. CONSPECTUS GENTIANACEARUM JAPONICARUM - A general view of the Gentiacaceae indigenous to Japan. Journal of the Faculty of Science, Hokkaido University. Ser.5, Botany 7(4): 137-259. hdl.handle.net/2115/26303

豊国秀夫 (1986)「リンドウ類の概観」北方山草 6, pp.3-10, 北方山草会.

梅沢俊 (2009)『新版北海道の高山植物』p.74, 北海道新聞社.

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Winfield, M. O., P. J. Wilson, M. Labra and J. S. Parker. 2003. A brief evolutionary excursion comes to an end: the genetic relationship of British species of Gentianella sect. Gentianella (Gentianaceae). Plant Systematics and Evolution 237(3-4): 137-151. doi:10.1007/s00606-002-0248-3

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